「イトーヨーカドー」「ヨークベニマル」「ヨークマート」、これらのスーパーマーケットの名前を耳にしたことがある方は多いでしょう。しかし、それぞれの企業の具体的な違いや関係性について、はっきりと説明できる方は少ないかもしれません。特に、イトーヨーカドーの鳩のロゴや、ヨークベニマル独自のマークなど、見た目は似ているようで異なる点も多く、混乱を招きがちです。この記事では、各社の成り立ちから事業戦略まで、イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークマートの違いを多角的に掘り下げていきます。
この記事でわかること
- 3社の基本的な企業情報の違い
- 事業を展開するエリアと店舗形態の特色
- セブン&アイグループ内での各社の位置づけと歴史
- ロゴマークや現在の生存戦略に見るそれぞれの個性
イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークマートの違い【基本】

- 企業概要:イトーヨーカドー
- 企業概要:ヨークベニマル
- 企業概要:ヨークマート
- 展開エリアと店舗形態の違い
- 歴史から見る3社の関係性の違い
企業概要:イトーヨーカドー
イトーヨーカドーは、株式会社イトーヨーカ堂が運営する総合スーパー(GMS)です。1920年の創業という長い歴史を持ち、セブン&アイ・ホールディングスの中核企業として日本全国に店舗を展開しています。
基本情報の比較
3社の基本情報を表形式でまとめました。なお、ヨークマートは2023年9月にイトーヨーカ堂へ吸収合併されており、現在は同社の一部門として運営されています。
| 項目 | 株式会社イトーヨーカ堂 | 株式会社ヨークベニマル |
|---|---|---|
| 本社所在地 | 東京都品川区 | 福島県郡山市 |
| 代表者 | 山本哲也 | 大髙耕一路 |
| 創業/設立 | 1920年 | 1947年 |
| 資本金 | 410億円 | 99億2,700万円 |
| 売上高 | 1兆1,761億円 | 4,919億円 |
| 従業員数 | 23,890人 | 19,542名 |
| 店舗数 | 198店舗 | 248店舗 |
(注) 売上高や従業員数、店舗数は各社の公式情報(2025年2月期または9月時点)を基に記載しています。(出典:イトーヨーカドー公式サイト, ヨークベニマル公式サイト)
イトーヨーカドーは、長年にわたり総合スーパーとして衣食住にわたる幅広い商品を販売してきましたが、近年は業績の低迷が課題となっていました。このため、2025年9月には米投資ファンドのベインキャピタル傘下で新たなスタートを切り、今後は食料品とドラッグストア領域に特化する「フード&ドラッグ」への大胆な業態転換を進める方針を発表しています。
企業概要:ヨークベニマル
ヨークベニマルは、福島県郡山市に本社を置く、地域密着型の食品スーパーマーケットです。福島県を中心に宮城県、山形県、栃木県、茨城県の東北南部から北関東にかけてドミナント戦略(特定地域への集中出店)を展開し、絶大なブランド力を誇ります。
1947年の設立後、1971年にイトーヨーカ堂と提携し、セブン&アイグループの一員となりました。グループ内での連携を保ちつつも、独立した経営体制を維持している点が大きな特徴です。特に、本部主導ではなく各店舗に大きな裁量権を与える「個店経営」という独自の運営方針は、地域ごとの細かなニーズに応える強さの源泉となっています。その結果、安定した収益を上げており、地域住民の生活を支える重要なインフラとして根付いています。
企業概要:ヨークマート
ヨークマートは、もともと株式会社ヨークマートとして1975年に設立された、首都圏を地盤とする食品スーパーマーケットでした。イトーヨーカ堂が100%出資する子会社としてスタートし、地域住民の日常の食卓を支える存在として成長しました。
時代の変化に対応するため、2020年6月には社名を「株式会社ヨーク」に変更し、イトーヨーカ堂から一部店舗を継承するなど再編が行われました。そして、グループ全体の経営効率化を目的として、2023年9月1日付で親会社である株式会社イトーヨーカ堂に吸収合併されています。(出典:セブン&アイ・ホールディングス - 合併完了のお知らせ)
現在、「ヨークマート」や「ヨークフーズ」「ヨークプライス」といった店舗ブランドは存続しており、イトーヨーカ堂が運営する食品スーパー事業の一部として、首都圏での役割を担い続けています。
展開エリアと店舗形態の違い
これら3社の最も分かりやすい違いは、事業を展開するエリアと店舗の形態です。
イトーヨーカドーは、関東・甲信越・中部地方を中心に全国規模で店舗を構える総合スーパー(GMS)です。食料品はもちろん、衣料品や住居関連商品まで幅広く取り扱う大型店舗が主体となっています。
一方、ヨークベニマルは福島県をはじめとする東北南部と北関東の5県に集中して出店しています。店舗形態は食料品に特化したスーパーマーケットであり、「地域のお客さまの毎日のくらしをより豊かに」をコンセプトに、地域に根差した運営を行っています。
ヨークマート(現イトーヨーカ堂の食品スーパー部門)は、首都圏(関東地方)に特化しています。こちらも食料品が中心ですが、店舗の規模はイトーヨーカドーよりも小型なものが多く、より日常的な買い物に便利な立地を目指しているのが特徴です。
歴史から見る3社の関係性の違い
3社の関係性は、イトーヨーカ堂を軸とした提携と子会社設立の歴史から成り立っています。
最も歴史が古いのは1920年創業のイトーヨーカドーです。ヨークベニマルは1947年に福島県で創業しましたが、転機となったのは1971年のイトーヨーカ堂との業務提携でした。この提携により、商品開発や仕入れのノウハウを共有し、大きく成長を遂げました。
ヨークマートは、1975年にイトーヨーカ堂が首都圏の食品スーパー事業を強化するために設立した100%子会社です。つまり、ヨークベニマルが「提携パートナー」としてグループに加わったのに対し、ヨークマートは「直系の子会社」として誕生したという成り立ちの違いがあります。
そして、2005年にセブン&アイ・ホールディングスが設立され、3社は同じホールディングス傘下の兄弟企業となりました。その後、前述の通り、2023年にヨークマートはイトーヨーカ堂に吸収合併され、組織構造が現在の形に再編されています。
イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークマートの違い【詳細】
- ロゴ:イトーヨーカドーの鳩
- ロゴマーク:ヨークベニマル
- 生存戦略から読み解く各社の違い
- よくある疑問をQ&Aで解決
- まとめ:イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークマートの違い
ロゴ:イトーヨーカドーの鳩
イトーヨーカドーの象徴といえば、多くの人が思い浮かべるのが「鳩のロゴマーク」ではないでしょうか。このデザインは、セブン&アイグループの共通理念である「誠実」と「信頼」を表現しているとされています。
この鳩のマークは、長年にわたり親しまれてきましたが、2005年のセブン&アイ・ホールディングス設立に伴い、一度はセブン&アイグループのロゴに統一されました。しかし、顧客からの強い要望やブランドイメージの継承を理由に、2017年頃から再び鳩のマークが復活し、現在も多くの店舗でその姿を見ることができます。時代を超えて愛されるこのロゴは、イトーヨーカドーという企業の顔であり、顧客との絆を象徴する存在と言えるでしょう。
ロゴマーク:ヨークベニマル
一方、ヨークベニマルのロゴマークは、赤い円の中に白い鳩が描かれたデザインが特徴です。これはイトーヨーカドーの鳩とはデザインが異なり、ヨークベニマル独自のものです。
このマークは、ヨークベニマルの「Y」と「B」をモチーフにしながら、鳩が未来へ羽ばたく姿をイメージして作られたと言われています。地域と共に成長し、発展していきたいという企業の思いが込められています。イトーヨーカドーと提携関係にありながらも、独自のロゴマークを使い続けている点は、同社が大切にしてきた独立性と地域への強いこだわりを象徴していると考えられます。同じグループに属しながらも、それぞれのロゴに込められた思いや歴史を知ることで、企業文化の違いが見えてきます。
生存戦略から読み解く各社の違い
現在、3社(ヨークマートブランドを含むイトーヨーカドー)は、それぞれ異なる環境下で独自の生存戦略を推進しています。
イトーヨーカドー:「フード&ドラッグ」への集中
前述の通り、イトーヨーカドーは長年のGMSモデルから脱却し、「食と健康」の領域に経営資源を集中させる戦略にかじを切りました。これは、衣料品や住居関連事業を別会社に移管し、収益性の高い食品と医薬品の販売に特化することで、厳しい競争環境を勝ち抜くための大きな決断です。ベインキャピタルの支援のもと、既存店の改装や商品開発を強化し、首都圏を代表する食品スーパーとしての再生を目指しています。(出典:日本経済新聞 - イトーヨーカ堂、人員2割削減)
ヨークベニマル:「個店経営」の深化
ヨークベニマルは、これまでの成功モデルである「個店経営」をさらに深化させる戦略を採っています。人口減少が進む東北地方においても、各店舗が地域の特性や顧客ニーズを徹底的に分析し、独自の品揃えや売場作りを行うことで、他社の追随を許さない競争優位性を築いています。地域コミュニティの核となる「生活インフラ」としての役割を強化し、持続的な成長を目指す方針です。
ヨークマートブランド:統合シナジーの追求
イトーヨーカ堂に統合されたヨークマートブランドは、グループ全体のスケールメリットを最大限に活かす戦略が中心となります。商品開発や原材料の共同調達、物流システムの効率化などを通じてコスト競争力を高めることが狙いです。イトーヨーカ堂のデリカ(惣菜)製造拠点「Peace Deli」の活用など、グループ内の製造機能を活かした独自商品の開発も進めており、首都圏の激戦区で勝ち残るための差別化を図っています。
よくある疑問をQ&Aで解決
ここでは、これら3社に関してよく寄せられる質問について、Q&A形式で解説します。
結局、3社はすべて同じ会社なのですか?
現在は、イトーヨーカドーとヨークベニマルがセブン&アイ・ホールディングス傘下の別会社として運営されています。ヨークマートは法人としては消滅し、イトーヨーカドーが運営する店舗ブランドの一つになっています。したがって、大きく分けると「イトーヨーカドー(ヨークマートブランド含む)」と「ヨークベニマル」という2つの企業が存在すると理解するのが正確です。
なぜヨークベニマルだけが独立性を保っているのですか?
ヨークベニマルは、イトーヨーカドーと提携する前から福島県で強固な経営基盤を築いていたことが大きな理由です。また、提携後も「個店経営」という独自のスタイルで高い収益を上げ続けてきた実績があります。そのため、セブン&アイグループとしても、その独立性を尊重し、地域に最適化された経営を任せることが最善であると判断していると考えられます。
使えるポイントカードや電子マネーは同じですか?
基本的にはセブン&アイグループ共通の「セブンマイル」や電子マネー「nanaco」がイトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークマートの各店舗で利用できます。ただし、店舗独自のキャンペーンやポイント倍率などは異なる場合がありますので、詳細は各店舗で確認することをおすすめします。
まとめ:イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークマートの違い
この記事では、イトーヨーカドー、ヨークベニマル、ヨークマートの違いについて、基本情報から最新の経営戦略まで詳しく解説しました。最後に、本記事の要点を箇条書きでまとめます。
- イトーヨーカドーは全国展開する総合スーパー
- ヨークベニマルは東北南部・北関東地盤の食品スーパー
- ヨークマートは首都圏地盤の食品スーパーブランド
- 2023年9月にヨークマートはイトーヨーカ堂に吸収合併された
- 現在はイトーヨーカ堂とヨークベニマルが別会社として存在する
- イトーヨーカドーの創業は1920年と最も古い
- ヨークベニマルは1971年にイトーヨーカ堂と業務提携した
- ヨークマートは1975年にイトーヨーカ堂の100%子会社として設立
- イトーヨーカドーのロゴは広く知られた鳩のマーク
- ヨークベニマルのロゴも鳩だが独自のデザインを採用
- イトーヨーカドーはフード&ドラッグ業態への転換を推進中
- ヨークベニマルは「個店経営」による地域密着戦略を深化
- ヨークマートブランドはイトーヨーカ堂との統合シナジーを追求
- 3社ともセブン&アイ・ホールディングスのグループ企業
- それぞれが異なる歴史的経緯と企業文化を持っている
